自然の中で心豊かに働くー若き技術者のチャレンジ

森林技術者

取材先:岐阜県森林組合連合会 岐阜林産物共販所

岐阜県は、県土面積の8割以上を森林が占める国内有数の森林県です。この豊かな森林を守り育て、次世代へと引き継いで行くためには、森林技術者の存在が欠かせません。しかしながら、そうした森林技術者の数は年々減少傾向にあります。こうした中で、「岐阜県森林組合連合会」で森林技術者として働く道を選んだ山口祥平さん。若き森林技術者の仕事に向き合う思いをインタビューしました。
岐阜県森林組合連合会 岐阜林産物共販所 林産班技術員 山口祥平さん

岐阜県森林組合連合会とは

森林組合は 森林所有者が互いに共同して林業の発展を目指す協同組合です。森林づくりは、半世紀から1世紀以上の年月と多くの労力を必要とするため、所有する森林面積が小さい日本の森林所有者の大多数は、森林組合を設立して、森林の管理や木材販売を協同で行っています。岐阜県内でも、20の森林組合が活動しています。
山口さんが働く「岐阜県森林組合連合会」は岐阜県内の森林組合のとりまとめ役として組合の指導・事業を通じて協力体制をとっている組織で、山口さんはその中の林産班で技術者として働かれています。

最先端技術を導入した林業の現場

東白川村の県道から山間に外れ、しばらく走ると森林へと入るゲートが見えます。そこからさらに曲がりくねった林道の先に、山口さんが担当する現場があります。杉の木が美しく切り立った山の斜面には、グラップルやプロセッサ、ラジキャリーなどの高性能林業機械が並んでいます。
現場まで運ばれたグラップル

「伐倒はチェンソーを使いますが、後はほとんど機械作業。グラップルに乗ったり、フォワーダーやプロセッサを操作したりして作業をしています」。近年の作業現場は、高性能の機械が次々と導入されていて、伐倒された木はプロセッサを操り、現場で枝を払って規定の長さに切断します。
プロセッサ:集材されてきた材の枝払い、測尺、玉切りを連続して行う自走式機械

道のない斜面で伐倒した木材は、架線によって林道まで持ち出すラジキャリーが活躍。
ラジキャリー:上げ荷・下げ荷ともに集材が可能な自走式集材装置

こうした高性能林業機械によって作業者の負担を軽減させ、安全で生産性を向上させた林業が行われています。

林業に携わる祖父の仕事に親しみ

山口さんは高校卒業後、美濃市の県立森林文化アカデミーで最新の林業について学び、同連合会に就職した若きホープです。
山口さんが林業を志したのは、白川町で林業を営んでいた祖父の影響が大きいといいます。「小さい頃からトビとチェンソー、ラジキャリーなどを使って伐採する祖父の姿を見ており、山は遊び場でもあったため、山の環境に親しんでいました。高校生の頃には何となく林業をやってみようかなと思っていました」。将来の仕事を林業に決めたのは、ごく自然な流れだったともいえます。
進路を選ぶ高校3年生の時、高性能林業機械の資格が取得できると聞き、同アカデミーに入学。「山で実習をしたり、木の活用の実践を学んだり、楽しい2年間でした」と学生生活を振り返ります。林業に必要な資格のほとんどを取得して卒業し、その強みを生かして現場の即戦力として仕事を任されています。
岐阜県森林組合連合会を選んだのは「山の現場で仕事ができ、安定していて休日がしっかり決められている」ことに魅力を感じて決めました。「4月に年間の休日が決定されるので、休みの計画も立てやすいんですよ」とオフを重視する今どきの若者らしい一面ものぞかせます。
岐阜県森林組合連合会での働き方の魅力について語る山口さん

早朝から日没まで自然の時計が作業基準

山口さんは、集合場所の美濃加茂市から約1時間の距離にある郡上市、加茂郡のエリアで、ほぼ1年中森林での作業に当たります。林業の朝は早く、午前8時には現場に到着。ミーティングでスケジュールや危険区域の確認などを行い、すぐに作業を開始し、途中昼食を挟み、日没まで作業に当たります。
「生産スケジュールがしっかりと管理されていて、それに基づいて作業をしていきます。長雨が続く時は市場での手伝いをしたり、機械作業をしたりすることもあります」。最近の激しい気象の変化を見ながら、現場で適切な判断をし、完遂できる作業日程を調整。早くて1ヶ月間、長い場合は半年間にわたって同じ現場で作業を行い、降雪や豪雨などのタイミングも合わせてチームで作業に当たります。

危険を常に意識して現場を見極める

林業機械で作業される山口さん

資格があるとはいえ、左右のハンドルを動かし、200kg近い丸太を上昇させたり、下降させたりする高性能林業機械の操作は、そう簡単ではありません。「雨で転がった木片が作業車の扉に当たって割れたこともあるし、伐採した木片が飛んできてけがをしたことがあります」。山の現場は常に危険と隣り合わせでもあり、油断が大きなけがにつながることも身に染みて感じています。
「危ないと感じたら、少し休んでみるなどリフレッシュすることも大切」とその都度、気持ちを切り替えて作業に向かいます。
作業道が整備されていなければ、伐倒した木材を搬出できないので、先に作業道を作ってから伐倒が始まります。効率的に作業を終わらせるためには、どう木を切ればスムーズに搬出できるか、作業の先に現れてくる森の状態をイメージして現場で判断しなければなりません。
先輩と二人一組で森林に入り、状況を見て時には山口さんも自ら提案します。「伐倒が始まれば、途中で修正ができないため山を見て、考えること」が後の作業効率につながります。「先輩のアドバイスを聞くと勉強になります。まだまだ失敗もありますが、一つひとつが経験となっていけば」と照れ笑いを浮かべます。
上手に木材が切り出されれば、傷や割れが少ない状態で出材ができ、商品として用途の価値に反映されます。「同じ方向にきれいに木を倒すことができたら傷は少なくなります。それが木材の品質にも影響することは在学中にも学びました。常にそんなことを意識しながら作業しています」。ダイナミックに見えて、実は伐倒は入念な作業の積み重ねで行われています。
伐倒され、現場に並べられた木材

伐採できるまで成長した木は、多くの人々が手をかけて大切に育てた資源であり、その先の商品へとつながっていくのだと認識させられます。

自然相手に仕事をして、癒やされる

「やっぱり、森の中で仕事をするのは開放感があって気持ちがいい。オフィスや工場で同じ作業をするのは、向いていないタイプなので。ショッピングモールなど人工物が多い所はすぐに帰りたくなり緑が恋しくなるんです」と笑います。とはいえ、春にはスギ花粉に悩まされ、猛暑の夏バテで体重が減ることもあり、自然相手の仕事の厳しさを痛感しています。病気やけがで誰かが休めば仲間に負担がかかり、「よく眠ること」は健康な体づくりにも欠かせません。
休日には趣味の鮎釣りをしたり、サップボードやキャンプをしたりして自然の中で体を動かす充足感を得て、再び森の中での仕事に向き合います。
「この3年間でどんな機械も運転させてもらうことができ、一つの現場を無事終わらせた瞬間にはやりがいがあります」と自信を深めます。「早く上に立てる立場になり仕事を任され、実務経験を重ねて架線主任者の資格を取得したい」と先を見すえて目を輝かせます。
自分の決めた道を一歩ずつ進み、林業に対して真摯に向き合う山口さん。
飾り気のない語り口の中にのぞかせる強い信念を感じました。

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岐阜県森林組合連合会ホームページ

「緑の雇用」総合ウェブサイト

岐阜県庁のホームページ

全国森林組合連合会ホームページ

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