幅広い年齢・経験の人を受け入れ、思いある森林技術者を育てたい

林業会社/森林組合

取材先:恵南森林組合

自然に育まれた良質な素材の生産を通じて
地域の森林を維持・保全

恵南森林組合で代表理事専務を務める中垣義光さん

1999年に岩村町・山岡町・明智町・串原村・上矢作町の5つの森林組合が1つになり、岐阜県下で3番目の広域合併組合となった恵南森林組合。岐阜県東南部にあるこの地域は、愛知・長野両県と境を接する場所に位置し、豊かな森林が広がっています。恵南森林組合では、素材生産を中心に地域の森林整備を行うとともに、地域の森林を守っていく森林技術者の養成に力を入れています。

森林が身近にある地域で
木を守り、暮らしを守る

恵南地区は、昔からひのき材が盛んに生産される、ブランド材「東農ひのき」の産地

恵南森林組合では、5つの旧町村に広がる国有林や恵那市有林、民有林を対象に森林を整備。この地域に多く生育するヒノキを、ブランド材である「東濃ひのき」として価値を高め、供給するために、素材生産事業に力を入れています。
また、住宅街や道路、線路、電線などが近い場所などに立つ巨木や枯死木などの伐採依頼が増えてきたことから、2007年に「特殊伐採」チームを結成。特殊伐採は、狭い場所や建物が密集する場所にあり、根元から倒すことができない場合に、周りの建物などを傷つけないよう、高所から少しずつ枝や幹を伐っていく方法で、近年は地域住民からのニーズも増えているといいます。
代表理事専務の中垣義光さんは、「昔は木材を売ることを目的に、住宅周辺に木を植える人が多くいました。しかし、時代を経て大きく成長した木を維持管理できない方や、防災の観点から伐採したいと考える方が増えています。森林の保全だけでなく、住民が抱える木に関する困りごとに対応することも、私たちの大切な役割になっています」と語ります。古くから森林が身近にあった地域ならではの変化です。
現在は、森林技術者4名で特殊伐採チームを編成

大型林業機械を導入して
生産性向上と負担軽減を図る

フォレストマネージャーとして素材生産チームを統括する小倉英敏さん

「素材生産を進める中で、大きな課題は生産性の向上です。材価が低迷する中、より多くの木材を供給するために、近年は作業の機械化に取り組んでいます」と話すのは、統括課長でフォレストマネージャーとしてチームをまとめる小倉英敏さん。恵南森林組合では、森林で働く技術者の負担を軽減しながらも、効率的な作業ができるよう、集積作業ができるグラップルや造材や集積作業ができるプロセッサなどの高性能林業機械を積極的に導入してきました。
生産性向上とともに、働く環境の改善を目指して機械化を促進

また、この地域は急峻な山が多い上、雨水などによって風化が進行していくと崩れやすい真砂土地帯が広がっているため、作業道をつくりにくいという特徴があります。そのため、伐り倒した木材をワイヤーロープで吊り上げて集材を行う「架線集材」が昔から行われてきました。しかし、架線集材は木に重い滑車を取り付ける必要があり、森林技術者の作業負担や危険性が課題になっていました。
そこで恵南森林組合では、装備された人工支柱を起伏させるだけで、簡単に架線を張ることができるタワーヤーダを早くから導入。これによって、これまで伐った木の搬出が困難だった場所でも集材ができるようになり、生産量が大幅に増加したといいます。
小倉さんは、「近年は木も大径木化しており、機械もそれに対応できるよう、徐々に大型化させています。ウッドショックを機に国産材への注目度も高まる中、ニーズに応えられる供給量を確保していきたいです」と意欲を語ります。

作業の安全性を重視して
新たな林業技術者を育成


多くの林業現場で技術者の高齢化や人手不足がさけばれる中、恵南森林組合は地域の山を守り続けるために、人材育成に力を注いでいます。恵南森林組合では、新卒採用はもちろん、30~50代と幅広い年齢を対象に中途採用も積極的に実施。これまで、未経験者や県外からの移住者などを受け入れてきました。林業経験がない人には、緑の雇用などの制度を活用して、さまざまな資格取得や技術の修得をサポートしています。
1~3年目の若手には、先輩技術者がマンツーマンで教育。常に状況が変化する山での仕事において、実際の作業を1つずつ教えるだけでなく、特に安全性の確保を重視することを伝えているといいます。また、現場の安全パトロールを定期的に実施して、問題点を把握。解決策をみんなで話し合い、ブラッシュアップを図っています。さらに始業時には、当日の作業に潜む危険箇所をチームで洗い出して分析。対策を綿密にたて、リスク軽減に役立てています。
「現在、こうしたリスクアセスメントは、若手も取り組みやすいようアプリを用いています。労働災害は『こうなるとは思わなかった』と経験値不足が原因になることも多いため、常に大勢でリスクになることを挙げて認識を高めることで、労働災害撲滅を目指しています」と、小倉さんは取り組みの意義を伝えます。

地域が誇る木材を継承していきたい
大きな夢に向かって着実に成長を

2022年4月に林業技術者として働き始めた鵜飼太謙さん(21)

鵜飼太謙さんは、恵那農林高校 環境科学科に通っていた際に林業体験をしたのを機に、森林に関わる仕事がしたいと感じるようになりました。その思いを持って岐阜県立森林文化アカデミーに進学し、林業の技術を学んだ後、2022年4月に恵南森林組合に入職しました。
現在は、素材生産のチームでチェーンソーによる伐倒や集材作業、下刈りなどを行っている鵜飼さん。「仕事をしている時は、1本1本の木材を大切にしなければいけないという、大きな責任を感じます。森林文化アカデミーで林業技術は学びましたが、やはり始めた頃は体力的な負担もあらためて実感しました」と、難しさを語りながらも「マンツーマンで指導を受けながら少しずつできることが増え、自分の成長をかみしめられる点がおもしろいです。森林整備は、作業が終わると日当たりや見晴らしがガラリと変わり、成果が明確に表れるので、その様子を見た時の達成感もたまらないですね」と、林業の醍醐味もしっかりと味わっています。
今では仕事にも慣れ、当初感じていた体力的な負担も少しずつ改善。現場での仕事は16時頃までで終わり、17時には帰宅でき、しっかりと体を休めることができていると話します。土日も基本的に休日が取れるため、先輩と釣りに出かけたり、友人とドライブや旅行に行ったりと、趣味も楽しむことができている鵜飼さん。「近くの温泉やサウナでリフレッシュするのも楽しみです」と、仕事とプライベートをうまく両立しています。
森林技術者として経験を積み始めた鵜飼さんですが、将来はプランナーの仕事にも興味を持っているそう。「地元の森林に育まれた東濃ひのきというブランドを守るためにも、現場の技術者とはまた違った目線で、次世代へつなぐ森林づくりに携わってみたいという思いがあります。そのためにも、今はまず現場での仕事をしっかりと身につけて、現場で働く技術者が整備しやすいプランづくりなどにいかしていきたいです」と、目を輝かせて夢を語ります。
素材生産チームでチェーンソーでの伐倒や集材作業に従事

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恵南森林組合ホームページ

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恵那市ホームページ