林業を若い世代に魅力を感じてもらえる仕事に

林業会社/森林組合

取材先:有限会社大原林産

昔から木が身近にあった地域で
父の思いを継ぐ女性社長

㈲大原林産の大西理恵社長


大原林産は、1952年に大野郡清見村(現在の高山市清見町)で企業組合として設立。その後、組合員が減少し、維持が難しくなったことから、企業組合を解散し、現社長・大西理恵さんの父親である先代社長が事業を引き継ぎ、新たに有限会社を設立しました。大西社長は2017年に父の後を継いで社長に就任。「もともと事務として働いていましたが、現場の仕事にも興味がありました。実は、郡上市内の林業事業者には、女性社長が4人もいるんですよ」と話す大西社長は、森林技術者7名とともに、素材生産や造林保育事業などに従事しています。

多くの樹種が育つ森林で
多様な木材を提供する素材生産に注力

この辺りは人工林として植栽したスギやヒノキ、カラマツのほか、天然林のシラカバなどの広葉樹が育つ


一年を通じて、素材生産を中心に造林保育事業を行う大原林産。大原林産は、もともと大野郡清見村(現在の高山市清見町)で企業組合として設立されたこともあり、所在地を郡上市に移した後も郡上市はもちろん、飛騨地方である清見地域でも事業を展開しています。この地域は、県内でも冬の寒さが厳しい地域で、植林されたスギやヒノキとともに、さまざまな樹種の木が生育。他の地域に比べ、広葉樹が多く生育する飛騨地方では、昔から木造建築や家具づくりなどの木工文化が根付いてきました。
大原林産では、地域で育ったさまざまな木を建材などに活用できるよう、市場に納材しています。また、同業者や市場の職員、木材運搬車の運転手などから、その時々の木材ニーズや木材需要情報を収集し、より付加価値の高い木材の生産に活かしています。

技術を受け継いでいく若い人材に
林業の魅力や働きやすさを伝えたい

60代のベテラン技術者によって美しく積まれた木材


20代~60代までの森林技術者7名が働く大原林産では、「すべての技術者が、どの作業もできるように」と、あえて決まった担当を設けず、幅広い技術の習得を目指しています。「最もベテランの技術者は、木材を仕分けて積み上げる作業がとにかく美しい。木材を取りに来たトラック運転手の方からも、『大原林産の現場は、本当にいつも仕事がしやすい』と言っていただけます」と、大西社長も胸を張ります。
しかし、こうしたベテラン技術者が培った技術を、次の世代に継承したいと思っても、近年はなかなか若手の人材を獲得できず、大きな課題となっていました。そこで大西社長は、5年ほど前から地元で森林について学ぶ科を持つ郡上高校や岐阜県立森林文化アカデミーを回り、学生のインターンシップ受け入れに注力。若い世代に林業の魅力を伝え、働きたいと思ってもらえるように努めています。
「今年もインターンシップに学生3名の参加が決まっています。また、企業ガイダンスにも積極的に参加して、1人でも多くの採用を目指しています」と話す大西社長は、若い世代が働きやすい会社を目指し、職場環境の整備にも着手。「私を含めて子育て中の人もいるため、毎月休日の日数を決めて、天候を問わずほぼ土日は休みにしています。林業は、朝は早い代わりに残業がないので、自分の時間を楽しんだり、家族とのコミュニケーションを図ったりしやすい仕事だと思います。今うちには女性の技術者がいないですが、今後は女性が活躍できる場もつくっていきたいですね」と、笑顔を見せます。

現在は5人で1チームを構成し、伐採や集材、造材、運搬などの各工程を分担。無線でコミュニケーションを取りながら作業している。

学生時代のインターンシップで
林業の魅力を体感

2021年4月から大原林産で働く西尾 魁人さん(21)


若手人材を求める大西社長の思いが実を結び、2021年には20代の新たな森林技術者が大原林産に仲間入りしました。西尾 魁人さんは、岐阜農林高校森林科学科に在籍中、インターンシップで林業に興味を持ち、森林文化アカデミーへ進学した際に、大原林産で1週間のインターンシップを体験。「もともと大きな乗り物に憧れがあったので、都会の喧騒から離れ、自然の中で重機を操作できる仕事に魅力を感じました」と西尾さんは話します。大原林産に就職した今は、自宅のある岐阜市から通勤しています。
現在は、プロセッサを操作して伐採した木を規格に合ったサイズにしていく造材の仕事に従事。始めた当初は、学校で経験したことと現場での仕事の違いに戸惑いもありましたが、先輩によるていねいな指導で作業にも慣れることができたといいます。「今はまだ自分の作業だけに集中していますが、林業はチームワークが大切な仕事。徐々に次の作業やこの木がどう使われるかなど、先のことまで考えながら、効率的な仕事ができるようになりたいです」と、西尾さんは目標を掲げます。

プロセッサによる造材作業を行う西尾さん

より安全な作業を目指して
コミュニケーションと学びの場を創出

チームリーダーを務める岡田 隆さん


森林技術者が働きやすい職場環境をつくり、人材の定着を図るために、大原林産が最も力を入れているのが安全対策です。「作業はやっていくうちに身につくもの。でも、常に状況が変わる林業の仕事では、自分で判断して動かなければいけないことも多いので、若手教育でもまずは仕事に潜む危険性や安全確保を第一に伝えています」と話すのは、技術者を束ねるチームリーダーの岡田 隆さん。日々の作業では、毎朝仕事の前に危険な箇所を共有し、作業中も無線機で常に声をかけ合っています。
また月に1回、事務所内で作業の進捗状況を報告し合い、ヒヤリハットの事例を洗い出して改善策を議論し合う「安全会議」を実施。さらに毎年、外部から講師を招いた「安全大会」を開催し、木材や流通の専門的な知識や円滑なコミュニケーション方法など、さまざまなことを学ぶことによって、安全性の確保や作業の効率化を図っています。
こうした取り組みの結果、最近では労働災害がほとんどなくなったそうです。大西社長も「朝は必ずみんなの顔を見るようにし、体調を確認してから現場に向かっています。日々の作業中は広大な山の作業地内でコミュニケーションをとることが難しいので、意識的にお互いのことを知る機会を設けていきたいです」と話し、社員同士の交流を大切にしています。

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