森林技術者の心強い見方、高性能林業機械

林業会社/森林組合

取材先:飛騨市森林組合

働く人の負担を減らして、安全に。
高性能林業機械がもたらすものとは

近年、林業現場で導入が進められている高性能林業機械。作業の効率性や快適性を高めるなど期待する声が聞かれますが、実際のところはどうなのでしょうか。岐阜県内の林業事業体の中でも高性能林業機械を多く保有している飛騨市森林組合を尋ね、現場ではどのように活用されているのか、林産課の課長補佐を務める新田克之さんに話を伺ってきました。

木材生産の始動とともに
高性能林業機械を導入

岐阜県北部の豪雪地帯に位置する飛驒市は、森林率が93.4%でそのうち広葉樹林が約7割、針葉樹林が約3割を占めています。日本全体で見るとほぼ半々の割合であることから、広葉樹が豊富にある地域であることが伺えます。

飛騨市森林組合はかつて、下草刈りや枝打ちなどの森林の保育作業をメインに取り組んできましたが、10年ほど前から木材生産を本格的に始めました。しかし、建築材に向かない広葉樹は、安価な燃料・製紙用のチップとして流通しているため、山に還元される利益が少なくなってしまいます。そこで最近では、行政と一体になって広葉樹の活用チャネルを増やす取り組みも始めています。

こうした木材生産にあたって高性能林業機械が必要となり、導入が進みました。実際に現場で機械を稼働させながら操作技術や集材のための活用法を身に付けていったと言います。
「どう使いこなすか、現場のエンジニアたちに自分で考えさせるようにしています」と新田さん。もともとノウハウがない状態だったからこそ自ら考えて実践し、血となり肉となるやり方が最適でした。

高性能林業機械、どう活躍してる?

現在、飛騨市森林組合で保有している高性能林業機械は、

・「タワーヤーダ」(備え付けの支柱から架線を張って林内から集材する機械) 1台
・「ハーベスタ」(立木の伐倒、枝を落とし、決められた長さに切る機械) 4台
・「プロセッサ」(枝を落とし、決められた長さに切る機械) 1台
・「グラップル」(丸太をつかむ機械) 4台
・「ウインチ付グラップル」(木を引き寄せるワイヤーを搭載したグラップル) 5台
・「スイングヤーダ」(架線を張って集材、グラップル作業もできる機械) 1台
・「フォワーダ」(丸太を積んで運搬する機械) 4台

以上の20台です。
※高性能林業機械の写真や解説はこちらのページも合わせてご覧ください↓
https://m-job.net/work/now/

林産チームは4つあり、1チーム3人体制。1つのチームでフォワーダ・グラップル×2・ハーベスタなど、
現場によってさまざまですが、1チームで4台ほどの高性能林業機械が稼働しています。

中央の黄色い柱を搭載している車両が「タワーヤーダ」

タワーヤーダの架線を利用して林内から運ばれてきた木々。オレンジの重機は「グラップル」

取材した現場では、タワーヤーダ・グラップル×2が稼働している作業システムでした。タワーヤーダで張り巡らされたワイヤーを駆使して林内から丸太を運び出し、出てきた丸太をグラップルで仕分け、チェーンソーで丸太を切り分けていくという流れになっています。

林内で高性能林業機械が動く光景は、今ではすっかり当たり前になりました。高性能林業機械を導入したことにより、「エンジニアの安全を確保し、負担を減らしている」と新田さんは話します。作業効率はもちろんですが、なによりも安全性が大きく重要視されています。

機械化を推し進めるのが良いとは限らない
自然とのバランスを見極めて活用

高性能林業機械を使うためには、そもそも、機械を山の中へ運ばなければいけません。そのためには道が必要です。しかし、「必要以上に道はつけたくない。最低限に抑えたいです」と新田さん。道をつけすぎると、かえって山を壊しかねる可能性も孕んでいます。最適なバランスを見極めて高性能林業機械を活用していくことがミソなのです。

限られた道で木材生産をより効率よく進めるためには、運び出した丸太の運搬も重要だと言います。飛騨市森林組合では運送会社のトラックを同組合の専属とし、常に現場にトラックがいる状態を整え、生産された丸太をすぐに市場や製材所などへ運送できるようになっています。このように、川上から川下までどのような流れで木材を運び出すか、その仕組みをデザインしていく工夫が施されています。

若い組織で新しい林業を、
新しい森づくりを模索

飛騨市森林組合のフォレストエンジニアの平均年齢は39歳。岐阜県内森林技術者の平均である47歳と比較するとかなり若い組織です。逆に、山のことを熟知したベテランが少ないとも言えますが、「まずやってみる、自分たちで考える」精神で、より良い作業内容を現在進行系で構築しています。

近年は木工作家視点での造材や、広葉樹の育成木施業などこれまでにないやり方に挑戦しています。こうした新たな展開の中、高性能林業機械も一つのキーアイテムとして運用され、可能性を広げる存在になっています。

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