若手や女性の力を活かして、地域に合ったサステナブルな林業を

林業会社/森林組合

取材先:可茂森林組合

地域の森林も林業も
将来にわたって維持できるように

全国的、そして慢性的に、担い手不足がさけばれる林業の現場。そんな中、可茂森林組合(加茂郡七宗町)では、地域の森林を継続的に守っていくために、若手技術者を積極的に雇用し、彼らがイキイキと力を発揮できる職場をつくろうと、新たな取り組みを始めています。今回は、地域の森林と林業の現場を持続させる活動に迫ります。

若手の雇用を守り、
働きやすい職場環境を整備

今回お話を聞いたのは、可茂森林組合の井戸正也さん。

現在、可茂森林組合では、現場で働く森林技術者10名のうち4名を20代前半の若手技術者が占め、若手の担い手育成に力を注いでいます。その一環として、平成29年には森林技術者の新たな事務所として「中切地区森林交流センター」が開設されました。

地域の人も交流の場や避難所として利用できる中切地区森林交流センターは、木材の90%以上にぎふ証明材を使用して、林業をPRする場にもなっています。

センター内は、森林技術者が利用できるミーティング室や休憩室のほか、各自のロッカー、洗濯室、シャワー室などが完備され、仕事前の準備や終了後の休憩、他の技術者と情報共有ができる場に。またパソコンも常備されており、技術者が自らコスト管理などをすることで、自分たちの森林技術がどのくらい収入につながっているかという意識を高めているといいます。

井戸さんは「森林技術者が快適に仕事をできる環境を整えなければ、担い手は増えていきません。職場環境を整備しながら若手を増やすことで、現場の雰囲気もよくなり、人材も定着していると感じています」と効果を実感しています。

パソコンやデスクワークができるスペースも設けられたミーティング室

各自のロッカーやシャワー室、休憩室もあり、仕事の後も体を休めることができます。

森林面積が少ないエリアで
必要とされる林業のカタチとは

伐採した竹を破砕機でチップ化。

可茂森林組合が管轄するのは、岐阜県の中でも中濃地域にある7つの市町。実はこのエリアの森林は、人工林率が4割と低く、ほとんどが広葉樹林や竹林が広がる里山になっています。里山とは、人里近くにあり、その土地の暮らしに直接結びついている森林のこと。最近は里山の荒廃が進み、景観の悪化や野生動物の被害などにつながっているため、可茂森林組合では各地域に合った里山整備に力を注いでいます。

例えば、里山の多くを占める竹林の整備では、腐りにくい竹を現場で粉砕してチップにし、現場に敷いて草が生えてくるのを防止。また、竹チップにバイオマス燃料の灰を独自で配合し、舗道や田畑の畦道の舗装に使用する試みも始まっています。

2017年に可茂森林組合に入職し、里山整備を担当する若手技術者の佐名 海斗さん(23)は、「竹林は成長が早く、荒れると見栄えも悪くなるので、整備をして一帯がきれいになると、達成感も大きいです。里山は民家が近い分、地域の人たちとの交流もあり、感謝の声を聞くことも多いですね」と、やりがいを語ります。

佐名さんは、地元の加茂農林高校から岐阜県立森林文化アカデミーに進学し、林業エンジニアの勉強をした後に可茂森林組合に入職。

現在は技術者4人が所属する里山整備班で、一番の若手として働く佐名さん。「早く一通りの仕事を覚えて、次は教えられる立場になっていきたい」と話します。

また、7つの市町がそれぞれに抱える里山の課題を林業で解決する取り組みにも、積極的に参加しています。里山に耕作を放棄した茶園が多い七宗町では、3~4mまで伸びてしまった茶木を伐り、幹ごとチップ化。それを隣接する美濃加茂市の里山整備で出た薪を燃料として焙煎し、「三年晩茶」という特産品をつくって、里山整備と地域活性化を両立する取り組みも行っています。

美濃加茂市では、里山の資源を有効活用しようと、市内の森林に群生するアベマキという木を使った「アベマキ学校机プロジェクト」に参画。アベマキを天板にした学校机を地元の山之上小学校に導入し、子どもたちに6年間その机を使ってもらうのはもちろん、伐採の現場を見学するなど林業に触れる体験をする機会も設けています。

そのほか御嵩町では、人手不足から管理に課題を抱えていた町有林の森林経営を、平成24年から可茂森林組合に信託。森林組合と御嵩町が連携して森林を運営することで、将来的に建て替えを予定している庁舎は、100%町有林の木材を使用した木造にする計画が進められています。こうした取り組みは県内で初、全国でも2例目となっており、御嵩町をモデルケースにしたいと全国からの視察も多いそうです。

井戸さんは「中山間地だからこそ、地域活性化にもつながる林業は、まだまだ可能性があると思います。これからも各地域と力を合わせて、里地に必要な持続可能な林業を考えていきたい」と、今後の新たな取り組みにも意欲を見せています。

女性の発想を活かして
地域の人が木に触れる機会を

木工旋盤で木の皿を作るなど、さまざまな木工体験イベントを企画する山路さん。

地域に密着した林業を進める可茂森林組合が、今新たに取り組んでいるのが、一般の人に林業を知ってもらう活動です。そこで活躍しているのが、2019年に入職した山路 今日子さん(37)。以前は名古屋で会社勤めをしていましたが、山々が住宅地になっていく様子を見て、木を生かす仕事に就きたいと、2017年に岐阜県立森林文化アカデミーに入学して木工を専攻。その後、地域で木を活用するプロジェクトに積極的に関わる可茂森林組合に入職しました。

現在、山路さんは美濃加茂市にある「みのかも健康の森」を拠点に、木工体験講座を担当。本格的な木工機械を用いて木の皿を作ったり、森のようちえんに子どもを通わせているママを対象に木のスツール教室を開いたりと、気軽に木工ができる機会を創出しています。

また、自身も森林文化アカデミーへ入学時に、美濃加茂市に移住した山路さん。「美濃加茂市を選んだのは、里山の景色がとても美しく、のどかな雰囲気に惹かれたから。自然とまちが近く、とても住みやすい場所だと思います」と、里山に息づく暮らしを満喫しています。

「今は里山整備で出た木を薪や炭にして販売していますが、今後は木材としても販売し、多くの人に木工を楽しんでもらえれば」と、意気込みを語ってくれました。

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