『お金で買える安全は買おう。』職員の安心安全を守る会社

林業会社/森林組合

取材先:付知土建株式会社


付知は岐阜県の最東端に位置し、長野県との県境に近い場所にあります。絶景で有名な付知峡に代表されるように、自然豊かな地域です。昔から林業が盛んで、伊勢神宮の式年遷宮で使用される御用材を700年来、提供している、良質な木材の産地です。
付知土建株式会社は、そんな付知で林業及び建設業を営む創業70年以上になる会社です。これまで長年、付知の山と向き合ってきました。今回は、山奥にある現場にお伺いしました。その場所は、麓から林道を使いクルマで1時間程のところにある山深い現場で、標高1000m以上にもなるロケーションでした。
そこでお会いしたのは、現場の責任者である常川さんです。

取材:付知土建 常川さん

林業の世界で11年の若き現場リーダー

常川さんは35歳になり、林業を始めて11年目になるフォレストワーカ―です。本来であれば中堅のキャリアですが、若いながら現場をまかされています。林業に就業する前は、色々な職を転々としていたが、林業は自分に合ったので、長年、山と付き合ってきたといいます。「木を倒した時の衝撃が好き」と、林業という仕事に魅力を感じている常川さんからお話をお伺いしました。
付知土建には造林と生産という2種類の仕事があります。造林は植栽から除伐、間伐をして木の育成を促します。常川さんが担当している生産は木を切り、集材、造材(丸太にすること)をしてトラックに積載するところまでを行います。そこからは市場に出材され、木材として様々な用途に使用されます。

現場で作業をされている常川さん

誰も怪我をさせない安全対策

とにかく大事にしているというのが、安全です。「生活のために仕事をしているので、怪我はしたくありません。自分はもちろん、同僚も怪我をしないように、日々、安全対策を考えています」という常川さん。
そこで行っているのがKYです。KYとは危険予知活動の事で、リーダーを中心に作業チームで話し合う事で、危険に関する意識を高める事をいいます。常川さん達は毎朝、作業の開始前に現場スタッフ全員にて、その日の現場で予想されるリスクについて話し合っています。各々で2,3個のリスクをあげてもらい、最終的に1つに絞ったリスクに対する行動目標をたて、その日の作業に入ります。実際にこの日に行われている簡易架線集材に関して、想定されるリスクを教えていいただきました。
取材時の作業の様子「簡易架線集材」

簡易架線集材は、路網からの距離があるため、重機で直接搬出できない場所で伐採した際、ワイヤーを使用して道路の近くまで木を運び出す作業の事です。作業は荷掛者と重機オペレーターの2人で行います。まず、荷掛者がワイヤーを木材に付け、安全な場所に退避した後、重機でワイヤーを引っ張って木材を搬出します。距離が離れていたり、地形や障害物でお互いが見えない場合も多く、リスクが多い作業です。材木をスイングヤーダで地引きしていく際、材木が途中で障害物にひっかかり反転して荷掛者に衝突する場合があるそうです。合図の誤認もあります。

双方向性無線機の導入により、リスクを回避

現在は、双方向性の無線機で通話しながら作業しているため、以前に比べて事故のリスクは減ったそうです。昔は手で合図をしていた時もあり、リスクが多かったといいます。
現在、使用している無線機は電話のように双方向性で通話ができるため、常時、お互いに通話ができるそうです。多くの無線機は通常、一方向にしか通話が出来ないため、直ぐに返信が出来ません。送信する際にボタンを押す必要もあり、受信にもタイムラグが発生するため、急な出来事に対応が遅れる要因になります。

実際に活用されている双方向無線機

双方向性無線機は新たに昨年、導入したそうです。「お金で買える安全は買おう」という会社の方針により、安全第一が言葉だけではなく、具体的な対策に表れています。何よりも親身になって意見を聞いてくれる体制により、現場スタッフも安心して作業できるそうです。社長、常務は月に一度は各現場をパトロールし、安全の確認はもちろん、作業スタッフとのコミュニケーションも欠かしていません。常川さんは社長や常務と会う機会も多く、会えば色々な意見を交換しているという事です。

若き経営陣の一人 常務の三尾隆介さん

常務の三尾隆介さんにもお話を伺ってみました。三尾さんは37才という年齢ながら、三尾社長の長男という立場から共に経営に携わっています。付知土建に入社される前は、大手の建設会社で修行をしていた事もあるそうですが「弊社は小さな会社ながら、一人一人の社員と交流をもてる」と社員達を気にかけています。毎月、全ての現場をパトロールし、安全の確認と現場スタッフとのコミュニケーションを欠かしません。常川さんとは年齢と勤務年数が近い事から、交流が多い関係です。三尾さんにとって常川さんは、真面目で気配りができるという頼もしい存在だそうです。
三尾社長が掲げる安全対策へのモットーは、常務の隆介さんも重視しています。風通しの良い社風を意識し、現場の声に耳を傾けるのはもちろんですが、スムーズなコミュニケーションができるよう、人事体制にも手を加えています。現場が働きやすく、社員達のモチベーションが上がるように、様々な対策をしています。
また、会社のSNSの発信を担当しており、特に若い人たちに山の事を知ってもらう目的で林業や社員の事を伝えています。インスタグラムは1000人以上のフォロワーを集め、若い感性で魅力ある内容を投稿しています。
三尾常務が発信しているInstagram

フォレストワーカーに向いている人とは

ここで常川さんに、求められているフォレストワーカ―についてお伺いしました。
林業の仕事についてお話される常川さん
「体力がある人が向いている。ハードな仕事なので、それに付いていける事が必要。何よりも仕事が好きという気持ちが重要です。」
今年、高校新卒で入社した女性は、林業を学んでいた訳ではなかったのですが、高校生の時に現場に見学に来て、山への気持ちが強くなり、現場の雰囲気も良かったという事で入社しました。
「少し前だと女性が林業に入るのも異質だが、時代が変わってきた」。林業に限らず、建設業でも増えてきています。付知土建では、これまで女性従業員は事務員として入ることが多かったそうですが、現場でも働けるよう、環境づくりに力を入れています。
新人の女性スタッフは、1年目ながら、現場に出て作業をしながら経験を積んでいます。「現場でも女性が働きやすいようにしてきたい」と門戸を広くしている事を伝えていただきました。
今回、お話を伺った常川さんと三尾さんは会社の事業の最前線にいる役割です。しかし、それを支えるベテラン社員の存在も大きく、また、次代の若い社員も大切にしています。社員を大事にするところは、創業70年以上も続く理由の一つと感じました。
しかし、伝統に縛られる事なく、現場の意見を吸い上げる経営陣の姿勢や、三尾さんのようにSNSでの活用等は、とてもフレシキブルな社風です。生き残っていくためには、これからも成長と進化を続ける必要がありそうです。

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